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スキルアップ講座「世界を旅するウスバキトンボ ~市民科学のチカラと成果~」を実施しました
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【主催】 三重県環境学習情報センター・三重県みどり共生推進課
【日時】 2025(令和7)年3月8日(土) 13時45分から15時45分
【場所】 三重県総合博物館 3階 レクチャールーム(津市)
【講師】 市川 雄太 氏(愛知県立岡崎高等学校 教諭)
小長谷 達郎 氏(奈良教育大学 准教授)
【参加人数】 29人
【担当】 環境学習推進員 東、木村、坂崎
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世界の熱帯に広く分布し、長距離移動をして日本にも飛来するウスバキトンボは、その生態のほとんどが謎に包まれています。彼らの生活史や移動などの生態を解明しようと、2人の研究者が、情報ネットワークを活用して、全国規模での市民参加型の調査を展開して3年が経ちました。
今回は、主に調査活動を担当している市川さんと、解析を担当している小長谷(こながや)さんのお2人にご講演いただきました。お2人がそろって講演をするのは初めてだそうです。

最初に、生態系と生物の移動について基礎的な説明があり、トンボの生活史についてお話をされました。一般的に、トンボは幼虫時代を水中で生活し、羽化して成虫になると森林や草地などへ移動し、そこで過ごします。その後、性的に成熟して交尾や産卵ができるようになると、再び水辺へ戻ってきます。
ウスバキトンボの成虫は、何世代もかけて長距離を移動し、分布域は世界のトンボの中で最も広いと考えられています。南方から海を越えて日本に飛来し、世代を繰り返しながら北上します。卵が幼虫に孵化するまでの期間や、幼虫が成虫になるまでの期間が、他のトンボに比べて短いことが、それを可能にしている理由のひとつとして考えられます。ただ、寒さに弱いため、日本では幼虫や卵で越冬することはできません。
ウスバキトンボの長距離移動の謎を解明するには、日本の各地で、何万頭ものトンボの翅(はね)に番号を書いて放し、また捕獲するという、マーキング調査(標識再捕獲調査)が必要です。たった2人の研究者では不可能です。市川さんと小長谷さんは、NHKのテレビ番組「ダーウィンが来た!」の協力を得て、各地の有志が結成した調査チームによる調査に加え、番組とホームページを観た方でも気軽に参加できる形をとることにしました。
調査を始めて3年が経ち、様々なデータが蓄積されてきました。それらの結果は、ウスバキトンボは成熟段階(人間でいえば「年齢」のようなもの)で活動時刻や再捕獲率が異なり、また、成熟段階の構成の季節変化には地域差があるらしいことを示しています。講師のお2人は、これらの結果をもとに、ウスバキトンボの長距離移動や定住時期について考えています。
今後もこの調査が続けられ、ウスバキトンボの長距離移動の謎、そして、自然環境との関わりが解明されるといいですね。

【参考】ウスバキトンボ全国マーキング調査(外部サイトへ移動します)
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